きねぞう

映画の感想や関連記事を載せていくブログです。

特集:徹底解析!【ドラえもん のび太と銀河超特急】を語り尽くす! Part3

 

 

Part3:ダーク・ブラック・シャドー団

 

支度が出来たので、しずかちゃんと共に、二人の部屋を訪れます。

しかし、ジャイアンはテレビに、スネ夫はコンピュータ・ゲームに夢中になっています。ちなみにスネ夫がやっているゲームはPS4のVRみたいですが、ゴーグルをかけていないのび太としずかちゃんにもゲームの映像が見えている所が不思議です。あのゴーグルの意味は何なのでしょうか。

仕方なく、二人で展望車に向かうことに。

「どう? この素晴らしい眺め!」

「眺めって……?」

展望車に入りますが、真っ暗な空間が広がるばかりです。不安がる二人の目の前で、光の爆発が起こります。ショックを受けたのび太は気を失い、その場に倒れ込んでしまいます。

「どうしたんだね? どれどれ、診てあげよう」

少し太り決めの男がやってきて、のび太の心音を確認します。

「心配ない。軽い脳震盪だ。少し横になってれば、すぐ気がつく」

展望車のベンチにのび太を寝かします。

先ほどの爆発はバーチャル映像で、銀河誕生の解説が行われていたのでした。

彼の言った通り、すぐに目が覚めるのび太。

「難しい話でぜんぜんわかんない……」

バーチャル映像の解説が退屈になったのび太は、部屋に戻ります。

 

他の乗客もちらほら出はじめ、賑やかになっていきます。

ドラえもんを探すのび太ですが、7号車に入るとスネ夫の悲鳴が聞こえます。

「出たーっ!」

「何が出たの?」

「海賊……!」

続いて、3号室にから青い顔をしたジャイアンが出てきます。

「恐竜が出たーっ!」

「恐竜!?」

「窓を破って覗き込んだんだ!」

ところが、3号室に入っても、ねずみ一匹見つかりません。破ったという窓も確認できませんでした。

「ホントに見たんだ! 疑る奴はぶんなぐる!」

すごい発言です。

「疑ってなんかいないよ! さっき僕も西部劇を見たって言っただろう?」

ドラえもんに直訴して調べてもらうべく、3人は展望室に向かいます。

すると、汽笛が鳴り響きます。

続いて、深刻な様子で展望車に入り込んでくる、ドラえもんと車掌。大事な話があるらしく、車掌や他の乗客たちとは別に、一同はミーティングルームに集まります。

「ええっ? 凶悪な盗賊団?」

「そう、ダーク・ブラック・シャドー団。宇宙の果てに流れ着いた犯罪者たちが、無人の小惑星を根城に……」

このドラえもんの凄みをきかした喋り方が好きです。

 

これから向かう先に、その盗賊団が待ち構えているという情報が入ったのです。

展望車でも、他の乗客たちに、車掌が詰め寄られていました。

「絶対に安全なツアーだと信じてたのに」

「私たちはどうすりゃいいんだ?」

「部屋にでも籠って、鍵でもかけて、お祈りでもしてください」

と、困りながら超適当なことを言う車掌さん。が、かわいいので許したくなります。

 

「よくも俺たちを誘ったな……」

ミーティングルームでは、ジャイアンとスネ夫がのび太とドラえもんに詰め寄ろうとしていました。なんとも変わり身の早い奴らです。自分たちで勝手についてきたくせに(笑)。

「帰ればいいんだわ! どこでもドアで!」

名案を出すしずかちゃん。その瞬間、他の四人が組体操みたいに手を繋いで仲直りする所がなんとも微笑ましいです。

しかし、意気揚々と帰ろうとしますが、どこでもドアの中に入ろうとしても跳ね返されてしまいます。

「ドアの中の超空間に、バリアが張られてる! シャドー団の仕業だ!」

「ええーっ?」

驚愕する一同。

「誰も、この列車から抜け出せなくなった!」

 

ここで再び、メンデルスゾーンのクラシックが盛り上がっていきます。

さぁ、映画らしくなってきました。ここからが序盤の見せ場です。

列車は小惑星の中に入っていきます。揺れる車内に翻弄される一同。

みんなが絶望する中、カメラがのび太の顔をズームで捉えます。

「ねぇみんな、やっと面白くなってきたじゃない」

立ち上がり、のび太はみんなに説きます。

「僕たちは、いつもこんな冒険をしてきたんじゃなかった? 何度も戦い、その度に乗り越えてきたじゃない! 今度も逃げないで、ぶつかっていこうよ!」

のび太の言葉で、一同の顔が凛々しく引き締まります。

「のび太って映画になると急にかっこいいこと言うんだから」

スネ夫がメタ発言までします。

みんなでシャドー団と戦うことを決意します。

 

「通りぬけフープ」 を使って、列車の外に出るのび太とドラえもん。

タケコプターが使えないため、「ペタリ手袋と靴」を使い、列車の屋根を伝いながら、先頭まで向かいます。

先頭車両に居た車掌と合流する二人。

「やぁ、君たちも夕涼みかね?」

先ほど、展望車でのび太の看病をしてくれた男も後ろからやってきます。

「私はボーム。コスモタイムズ社の記者です」

今回のゲストキャラ、ボーム。序盤、中盤、終般、あらゆる場面でのび太たちの助けとなる、有能キャラです。見た目が地味なので全く印象に残りませんが、本作においてはドラえもんよりも活躍するキャラクターであり、ボーム無しに今回ののび太たちの冒険は成立しないといっても過言ではありません。塩沢兼人が声を当てているのも特徴ですね。

「新聞記者さんがなぜこの列車に?」

「久しぶりの休暇を楽しむはずだったんだが、どうやらとんでもない特ダネにぶつかったらしい」

ボームの目線の先にある、小惑星。そこから謎の光が。小惑星の一つ一つにシャドー団が隠れているとのこと。やがて、一機がこちらに攻撃を仕掛けてきます。

車掌は先頭車両にある大砲型の信号弾で迎撃しようとしますが、シャドー団にはたやすくかわされてしまいます。業を煮やしたのび太が、大砲を操作しようとします。

「ちょっと! 子供のオモチャじゃないんですから」

「のび太君は射的の天才なんです。他に取柄は無いけど!」

のび太の放った信号弾が命中し、一機を撃退します。湧く一同。

「だが、ウヨウヨ出てきたぞ!」

のび太の反撃むなしく、シャドー団に囲まれてしまいます。

シャドーの総攻撃を受け、列車はコントロールを失い、落下していきます。

「あの星に吸い寄せられる!」

列車は、一つの惑星に不時着してしまいました。

 

 

次回に続きます!

 

特集:徹底解析!【ドラえもん のび太と銀河超特急】を語り尽くす! Part2

 

Part2:ミステリーツアーへ

 

列車が裏山に到着します。見かけは蒸気機関車ですが、立派な宇宙船。

この時にかかるのが、メンデルスゾーンの「真夏の夜の夢」です。ドラえもん映画でクラシックが使われたには、本作が初なのだとか。列車の動きととてもマッチしています。

自分たちの指定座席に従って、7号車に入る二人。

「うわぁっ、何これ? 外で見るより中は広いんだ?」

「圧縮空間なんだ。個室が5つ。ミーティングルームもついている」

列車が動き出し、裏山を出発する列車。あっという間に大気圏を超え、地球を見下ろしてしまいます。

しずかちゃん、ジャイアン、スネ夫の分も考えて、5つの個室をおさえてくれたドラえもん。毎度の事ですが、彼の財源がどこから捻出されているのか、気になる所ですね。

のび太は1号室へと入ります。個室の中も広く、寝台列車ということもあって備え付けのベッドまでついています。

「ご乗車ありがとうございます。この、宇宙ドリンクを飲みますと、真空や、低温・高温、どんな環境でも快適に過ごせます」

どこからともなくロボット音声が流れ、宇宙ドリンクがのび太の元に運ばれてきます。この宇宙ドリンクが、僕は相当憧れました。ヤクルトに、アルミ箔の蓋の上からストローを刺して「宇宙ドリンク」と称し、よく真似ていたことを覚えています。

机も設置されていて、ボタンを押せば壁が透けて見えて外の様子も観ることができます。

ドラえもんに誘われ、展望車に向かう二人。

「どこなの? 展望車って」

「えーっと、58号車だから……」

「58号車?」

「外見は8両だけど、本当は120両繋がってる」

車両の中を走る二人。のび太がバテてしまい、連結部分の近くでへたりこんでしまいます。ふと窓を観ると、外から忍者がこちらを覗き込んでいました。急いでドラえもんを呼びますが、窓の外からその姿は消えていました。

「宇宙空間に忍者なんて居るわけないでしょ」

外のドアを開けて確認しますが、やはり誰も居ません。というか、このドアがあっさり開くのは危険だと思うんですが。

タケコプターを使って車両をすいすい進み、展望車に着く二人。ガラス張りのようになっていて、外の景色を見渡せるようになっています。通り過ぎていく木星などを眺めます。

「やぁやぁやぁやぁ、地球のお客様ようこそようこそ。早速切符を拝見」

ここで車掌が登場。背が低いため、着ている服がブカブカ。本作のマスコットキャラ的存在です。かわいい。

土星を過ぎたため、列車はワープに入ります。眠くなってきたので二人も個室に戻ることに。

個室に備え付けのトイレで小便をするのび太。すると、洗面所の窓吸血鬼が映ります。急いでドラえもんを連れてきますが、既に窓からは消え去っていました。怖がったのび太は一緒に寝ようと2号車に押しかけ、仕方なく二人一緒に眠るのでした。

翌朝。学校に行くために、どこでもドアで家に戻ります。この非日常と日常を行き来する演出が素晴らしいですね。

 

「まるで貸し切り列車なんだ。乗り心地、サービス、言う事なし。展望車から観る、木星や土星の素晴らしさ。また今夜が楽しみだなぁ。あ、そういえばみんなのツアー、今夜出発だったね。それじゃぁみんなで楽しんできてね、じゃぁねー」

浮かれているのび太は、列車での出来事をみんなに話して聞かせます。去っていくのび太を見つめる、しずかちゃんとジャイアン。スネ夫がキレます。

「どうして二人とも黙ってるの? 言いたいことがあるんならハッキリ言ったらいいじゃない! あっち行けば良かったって思ってるんでしょ! さっさと行けば!?」

去っていくスネ夫。結構可哀そうです。

その夜。路地で佇む、ジャイアンとしずかちゃん。

「いいから、あっち行こ。俺がさ、のび太に頼んでみるから」

「でも……」

罪悪感からか、あまり乗り気でないしずかちゃん。しかし背中にはちゃっかりリュックサックがある所が狡猾ですね(笑)。

のび太の家に着く二人。

「こんばんはー」

「やぁ」

「おう、心の友。実は頼みが……」

このジャイアンの変わり身の早さには笑ってしまいます。

「わかってる、待ってたんだ。さ、あがってあがって」

優しい笑みをたたえ、二人を歓迎するのび太。

「ママ、みんなで宿題合わせするから邪魔しないでね」

「こんなに遅く、大変ねぇ」

騙されるママも大概です。ここで階段をあがりながら「すいませーん」と謝る、ジャイアンの妙な外面の良さも相まって、なかなか面白いです。興味深いのは、列車に乗る前にこういう描写をきちんと入れていること。こういう何気ない日常描写の積み重ねが、荒唐無稽さを限りなく排除してくれているのだと思います。

のび太の部屋につくと、そこにはスネ夫が居ました。二人より先に、ちゃっかりこちらに乗り換えていたのでした。

 

どこでもドアで、列車の中に入る五人。

「これが列車の中?」

「まるでホテルね」

「すげー」

感激する三人。しずかちゃんは5号室、スネ夫は4号室、ジャイアンは3号室へ。準備が済んだら展望車に行くことになり、待ち合わせ場所のミーティングルームに一人向かうのび太。

すると、そこに待っていたのは西部劇に出てくるガンマンでした。ピストルで撃たれたのび太は、すぐさま3号車のジャイアンの元に向かい、助けを求めます。ドラえもんは車掌に会いにいくため不在にしていたとはいえ、ここで真っ先にジャイアンに助けを求める所が、なんだかんだと言って信頼しているのだと微笑ましくなります。ここで「怪しい奴なら任せとけ」と言って付いてきてくれるジャイアンも頼もしい。

しかし、案の定、部屋に入るとそこには誰も居ませんでした。

「なぁ~んか変だ。忍者に、吸血鬼に、西部劇。一体なんなんだろう?」

 

 

次回に続きます!

 

特集:徹底解析!【ドラえもん のび太と銀河超特急】を語り尽くす! Part1

 

僕にとって、ドラえもん映画の中で最も思入れのある作品がこの「銀河超特急」です。といっても実際に劇場でドラえもん映画を観始めたのが次回作の「ねじまき都市冒険記」からなので、本作はテレビ放映されたものを録画して観ていたに過ぎません。しかしリアルタイムでこそ鑑賞はしていませんが、VHSテープが擦り切れそうなほどリピートしており、劇場作品の中では一番観ている作品だと思います。

 

レビューを書くにあたり内容を確認せねばと思い、ちょっとだけ観るつもりでしたが、結局最後まで観てしまいました。やっぱり面白い。「鉄人兵団」や「雲の王国」などといった、黄金時代の劇場作品と比べると分が悪いですが、僕にとっては一番馴染み深いのです。

今回は映画「ドラえもん のび太と銀河超特急」のストーリーを改めてなぞりながら、その魅力に迫りたいと思います。いつもよりも長くなりそうですが、お付き合い頂ければ幸いです。

 

 

 

part1:物語の始まり

 

まばゆい星が広がる、宇宙空間。その中を、謎の宇宙船が進行しています。宇宙船の外観を映したまま、乗組員らしき者たち同士のやり取りが聞こえてきます。姿は確認できません。

「新銀河に接近! 乙女座銀河団に属する一つです!」

「知的生命体は居そうか? 居ればその知的レベルは?」

声がザ・悪役。

画像サーチを開始すると、遠めに鉄道列車のような宇宙船が銀河の中を進んでいるのが確認できました。不審に思う彼らですが、すぐに古い宇宙船しか使えない文明レベルの低い連中なのだと納得。次の獲物はあの銀河だ、と狙いを定めます。彼らは宇宙をさまよう侵略者たちだったのです。

 

一方、地球。

いつもの空き地で、スネ夫が自慢をしています。残り2枚しかないミステリーツアーのチケットをみせびらかし、ジャイアンとしずかちゃんを旅行に誘います。のび太が遅れてやってきますが、どこか浮かない表情です。実はこの三日間、ドラえもんが帰ってこないとのこと。

心配するのび太に、

「どっかに飼われてるかもよ」

 「保健所に聞いてみた方が早いかもよ」

と馬鹿にするジャイアンとスネ夫の二人。煽りレベルが小学生とは思えません。これにたまらずのび太は

 

「ドラえも~ん!」

と叫び、恒例のオープニングソングが流れ出します。

ここ、テンション、ガン上がりです。プレステ1のスペック全部使ったみたいな、違和感剥き出しのフルCGも最高っす。この演出が、いつものテレビ放映と一線を画す、「これからドラえもん映画が始まるよ!」って感じがしてたまりませんなぁ。

 

その夜。家に帰ると、あっさり部屋でくつろいでいるドラえもん。夕飯前なのにドラ焼きを頬張っています。

どうやら、家を空けていたのは22世紀で買い物をしていたためのようです。ドラえもんが三日間並んでやっと手に入れたもの、それは「ミステリーツアー列車の切符」でした。SL型の宇宙船で旅する、宇宙のミステリーツアーです。

 

翌日、さっそく自慢話をするのび太。魅力的なそのツアーに、羨ましそうに耳を傾けるしずかちゃんとジャイアン。

「君たちも誘ってあげたかったのに、なんかスケジュールが重なってるみたいだね」

まさに一転攻勢。

「宇宙旅行も面白そうね」

「あ~あ、つまんねぇ約束したな」

スネ夫も一緒に居るのに、手のひら返しが凄い、しずかちゃんとジャイアン。

スネ夫は悔しそうに反論します。

「宇宙は危険なんだぞ! 真っ暗で、空気もないし!」

それに感化されたのび太はすぐさまドラえもんに泣きつきますが、一笑に付すドラえもん。保護者としての貫禄を見せます。

SL型の宇宙船は、かつて大事な交通手段として用いられてきましたが、どこでもドアが発明されてからはその役目を終え、今は観光用として使わているとのこと。遊覧船みたいなもので絶対安全なんだとか。こういう、ドラえもんの未来の世界観を掘り下げてくれる話って興味深いですよね。ドラえもんの口から聞くとお得な気持ちになります。

 

宇宙旅行は何日もかかるとのことですが、どこでもドアを活用した

「昼は学校、夜は宇宙旅行」

という提案をされます。なんて魅力的な響きなんでしょうか。日常と非日常がまじりあった、ドラえもんの世界観を端的に表す素敵な言葉ですね。

 

 一方、乙女座銀河では。

侵略者たちの宇宙船は、銀河の端、ハテノハテ星群に到着。生物の居ない惑星に着陸し、そこを根城とします。

 

 そして再び、地球。

夜になり、支度を進めるドラえもんとのび太。家を出る場面が描写されるのですが、ここが秀逸ですね。わざわざ、部屋の電気を消して、窓を閉じる所を描いています。この場面を省いたとしても、物語の進行には何ら問題はありません。しかし、この場面を描くことで、これから旅行へと向かう高揚感を見事に演出しています。

列車が来てくれることになっている、裏山に向かう二人。この裏山という舞台装置も素晴らしい。他の劇場作品でもたびたび使われますが、裏山は日常世界から異世界へと繋ぐ、架け橋の役割を担う事が多いです。

午前0時。裏山で待っていると、微かな汽笛の音が聞こえます。そして空から黄金の光が。七両編成のSL型宇宙船の登場です。冒頭、侵略者たちが発見した宇宙船はこれだったのですね。

 

次回に続きます!

 

映画評:【リメンバー・ミー】ラスト15分、涙が止まりません。

 

年に1度だけ、他界した先祖が家族に会いにやって来るという、死者の日。音楽が大好きな少年ミゲルは、先祖代々伝わる音楽禁止の掟に縛られていたが、祭壇から落ちた写真を見つけ、自分の先祖が伝説のミュージシャン、デラクルスだと確信。家族に認めて欲しいミゲルは祭りの最中に彼の霊廟に忍び込むが、デラクルスのギターを手に取り奏でた途端、死者の国に迷いこんでしまい……。

 

カラフルな色彩表現が観ていて非常に楽しい作品。

メキシコのあらゆる文化を映画の中に多彩なアニメーションで落とし込んでおり、冒頭ミゲルの先祖の歴史を、伝統ある切り絵細工・パピルピカドで描く所も実にスマート。

僕は特に、ミゲルと出会い行動を共にするヘクターというキャラクターに心を動かされてしまった。死者の日であっても、現世でその故人の写真がオフレンダ(祭壇)に置かれていなければ、死者は生者の国に帰ることはできない。誰からも写真を置かれていないヘクターは、向こう側の世界から完全に締め出されている。

生と死の境を結ぶ、マリーゴールドが滴るアーチの橋。彼はそこを無理矢理にでも突っ切ろうとするが、渡ることはできない。あがいても、オレンジ色に輝く葉に埋もれてゆくヘクターの姿に涙が出てしまう。

ミュージシャンを夢見るミゲルは、死者に国に迷い込んでしまうが、すぐに先祖の力で帰ることを許される。しかしそれは「音楽はもうしない」という契約付き。音楽への情熱を捨てきれないミゲルはそれを断り、死者の国に居るはずのデラクルスを探す冒険に出る。先祖である彼に「許し」を得て、生者の世界に帰った後も音楽を続けるために。その後にやってくる困難に対して、彼は常に自分の唯一の武器である音楽でそれらを乗り切っていく。音楽が、時間や空間を越えて何かを繋げ、蘇らせる。そういった音楽の素晴らしさを見事に映画的にリンクさせた屈指の名作。

 

89点

 

映画評:【新感染 ファイルナル・エクスプレス】ゾンビ映画の新たなクラシック!

 

84点

別居中の妻が住むプサンへ、幼い娘スアンを送り届けることになった父親のソグ。夜明け前のソウル駅からプサン行きの特急列車KTX101号に乗り込むが、発車直前に異様な様子の女性が列車に駆け込んでくる。女は乗務員に噛み付き、噛まれた乗務員もまた凶暴化し始める。感染者は瞬く間に増えてゆき、車内はパニック状態と化すが……。

 

韓国が生み出したゾンビ・パニック映画の傑作。時速300キロで走行する特急列車を舞台に、パンデミックに巻き込まれた人間たちの恐怖と戦いを描く。

主人公のソグは仕事人間でファンドマネージャーとしては優秀だが、家庭を顧みず、妻とは別居状態。幼い娘とも交流は少なく、誕生日プレゼントも以前買ったオモチャを再び贈ってしまうという始末。本作は幼い娘を守り抜きながら、失ってしまった父親の信頼と尊厳を取り戻すヒューマンドラマが通底しており、それは主人公サイドだけでなく、車内で生き残った乗客たちにも感情移入させる人物造形がしっかりとなされている。

 最近はゾンビが走るタイプの映画が主流になりつつあり、本作も例に漏れないが、大量の感染者が狭い車内を埋め尽くし、その塊が津波の様に押し寄せるビジュアルにとても新鮮味がある。乗り物パニック映画の側面としても優れていて、車内の空間を非常に上手く使っている。国中が感染拡大の危機に見舞われている筈だが、列車からでは外の情報が断片的であり、だからこそ恐ろしい。やがて感染者だらけの車両に生き残った乗客が分断されるのだが、どうやって連絡を取り合うのか、合流するのか。車内にある物を駆使して感染者を出し抜いたり戦ったりと、一つ一つの展開に様々なアイディアが詰め込まれている。そして勿論、異常事態にさらされることでパニックになる人間たちの描写にも容赦が無い。

 

映画評:【ランゴリアーズ】小説を読んでいるような面白さ

 

ロサンゼルスからボストンへ向かう、アメリカン・プライド航空の旅客機。熟睡していた10人を残して、乗員乗客が忽然と消えてしまう。外部への連絡も絶たれ騒然となる機内。偶然にも乗客として居合わせた同航空のブライアン機長の機転により、旅客機はメイン州の空港へと無事着陸する。しかし、そこにも人影はなく、謎は深まってゆくばかり。やがて、すべてを食らい尽くしてしまう怪物ランゴリアーズの気配が忍び寄り……。

 

スティーブン・キングの小説を映像化した本作であるが、実は劇場公開はされていない。正確には米国ABC放送によって製作された3時間のテレビドラマである。しかし、一つの作品として見事に完結している本作は充分映画の規格を満たしており、映画作品という位置付けで評価されている。

 

乗客が消失した旅客機というシュチエーション、やがて襲い掛かる謎の怪物など、パニックアクションとして非常にキャッチーなアウトライン。しかし、中身は異常事態に巻き込まれた10人が織りなす人間ドラマであり、プレステ1かと思うようなチープなCGが使われている所なども含めて、派手な作品では決してない。タイトルにもなっている怪物・ランゴリアーズは、物語の終盤にしかその姿を現さないのだ。

本作の醍醐味は、乗客たちが謎に対して様々な仮説を立て、検証や試行錯誤を繰り返してゆく過程そのものであり、長尺を贅沢に駆使した、登場人物たちの何気ないやりとりや心の動きに焦点に当てた点にある。それは、執拗に日常生活や人物を描写し、次第にその日常に怪異を持ち込んでゆく原作者キングの技巧に通ずるものがある。登場人物たちの言動がモタモタしているため「もっとキビキビ行動しろよ!」と急かしたくなる場面はいくつもあるのだが。

乗客10人も、基本的には普通の人たちであり、異常事態に等身大で立ち向かってゆく姿は非常に感情移入がしやすい。クライマックスのある大きな決断や、失われてしまったものを再び取り返してゆく一連の感動は、この手のスリラー作品にはなかなかない面白さであり、突っ込みどころは非常に多い所も確かなのだが、どうしても心を掴んで離さない魅力がある。

 

仮にハリウッドがこの作品をリメイクしたとしたら……。映画としての質は間違いなくグレードアップするだろう。しかし、よくあるパニックムービーが出来上がってしまうだけで、この作品全体に漂う空気感は消えてしまう気がする。それはきっと、キングの小説を読んでいるあの感じ、なのだと僕は思う。キングのホラー小説は、いわばヨタ話なのだ。ヨタ話なのに、ぐいぐい読ませてしまう。リアリティを感じる、感情移入してしまう。その魅力の片鱗を、本作は受け継いでいるのではないか……。

 

78点

 

映画評:なぜ【ニュー・シネマ・パラダイス】はダメなのか。

 

感動の名作として名高い「ニュー・シネマ・パラダイス」だが、僕はどうしても評価できない。映画で語ろうとしいている「善きこと」に、とても賛同できないからだ。

 

これは時計の針が止まってしまった人達の話だ。過去の最も素晴らしかった時間の中に閉じ込められて、今を生きる事ができない人の物語である。主人公は映画監督として成功するが、彼の心は、いつもあの映画館に通い詰めた少年時代に囚われている。それを、俯瞰した視点から批評的に「こういう人いるよね」と寂しげに描くのではなく、いかにも美談として描いてしまっている。そこに、僕は心底げっそりする。

象徴的なのが、終盤、初恋の女性と車の中で再会する場面。お互い家庭を持ち、いい歳になっている。それにもかかわらず、車の中でおっぱじめてしまう……。既に二人は違う人生を歩んでいる筈なのに、再びこの二人をくっつけてどうする。いつまでその過去に執着しているのか。郷愁を超えた、過去の幻影に縋る姿に、病的なものさえ感じる。

映画館が閉鎖する場面もちゃんちゃらおかしい。町中の人々が廃館を惜しんで映画館の前に集まる。「テレビが台頭してきて、映画館は廃れてしまったんだ」とその中の一人が言うが、これがおかしい。じゃぁ、悪いのはお前らじゃん。お前らが映画を見限ってテレビを見始めたから廃館になったんじゃないの?  テレビが普及しようと、この町の人々が映画館に通って映画を観続けていれば、少なくともこの町の映画館は存続していたんじゃないの? と言いたくなる。それを、もうすぐなくなると知った途端に集まって感傷的になって……本当におめでたい連中だな。

で、この町の中の一人に知恵遅れの浮浪者みたいなのが居るんだけど、そいつが昔と変わらずに居ることに、変わらない良さみたいなポジティブな印象付けをこの映画は行おうとするんだけど。彼がずっとその町で同じような生活を営んでいることが、本当に良いことなのか、作り手の人たちはよ~く考えて欲しい。

良かったのは、序盤の、町の皆に映画をおすそ分けする場面くらい。映写機をくるりと回転させると、映し出された四角い小さな映像が、部屋の中を滑らかに移動し、やがて窓の外に出て白い家の壁にスクリーンとなって映し出される。この一連のショットは素晴らしかった。が、ここでも文句を言わせてもらえれば、この白い家がいかにもスクリーン向き過ぎて作為的なのが過剰に際立つ。もう少し上手く演出して欲しい。

 

37点