きねぞう

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映画評:【散り椿】最新版にアップグレードされたチャンバラは見物

 

定期的に時代劇を観たくなる時がある。劇場の予告編を観て、チャンバラの素晴らしさに圧倒された僕は本編も観たが、これが良かった。

 

75点

享保十五年。藩の不正を訴え出たために藩を追われた瓜生新兵衛。追放後も連れ添い続け、病に倒れた妻の篠は、死の床で最期の願いを新兵衛に託す。それは、新兵衛のかつての友にして宿敵であり、藩追放に関しても大きな因縁を持つ、榊原采女を助けてほしいというものだった。

 

かつて黒澤明の撮影助手を務めた経歴も持つ名カメラマン・木村大作がメガホンを取った本格時代劇。

出自がカメラマンであり監督としての経験が浅いためか、物語前半の進展は遅々としており変化に乏しく、登場人物の行動原理もあやふや。話運びや人物描写においては、残念ながら稚拙という表現をせざるを得ない。どうでもいいが、新井浩文が最初に登場する場面で、彼が棒読み過ぎると感じたのは僕だけか?

しかし、それらの欠点を差し引いてもなお有り余る魅力を本作は充分に湛えている。ズバリ、それは映像にある。江戸時代の風景という時代再現以前に、日本にもまだこんな光景が残っていたのかと感嘆させられるような、自然の雄大さと瑞々しさを美麗に捉えている。

そして本作の何よりの白眉は、主演を務める岡田准一の殺陣である。まさかこんなに殺陣が上手いとは思わなかった。彼の佇まいにも貫禄がある。時代劇というジャンルは、名作と呼ばれていても今観れば陳腐に思えてしまう作品が多い中で、この最新にアップグレードされたチャンバラはまさに見物。刀を交えた時の金属音も小気味よく、かつ重みを感じさせる。また、所々に格闘や投げ技を織り交ぜて相手を倒すのも素晴らしかった。他の侍たちがきちんと髪を結っているのに対して、岡田准一演じる主人公の瓜生は不精髭を生やした浪人の出で立ちなのだが、それだからこそ、彼の戦い方が道場剣術の型に囚われない、死線を潜り抜けてきた者が持つ野性的な強さの説得力を弾き出しており、そこにリアリティとフレッシュさを生んでいる。

榊原采女役の西島秀俊もなかなか良かったと思う。個人的にこの人は演技が上手くないと思うんだけど、役柄上あまり感情を面に出さないので、うまくごまかせていたと思う。岡田とのチャンバラも良かった。というか、映画を観終わった後も、ユーチューブとかでチャンバラシーンだけを何回も繰り返し観てしまうほど気に入ってしまった。決して良く出来た作品ではないんだけど、もう一度観ることになっても全然問題無いほどに好きだ。

映画を評価するスタンスとして、僕はどちらかというと脚本派なのだが、それを問答無用とばかりに圧倒的な映像でねじ伏せてくれた快作であった。